2021年3月29日に、総務省、文化庁、厚生労働省、経済産業省の各担当課長連名にて、
「フリーランスを含めた芸能従事者の就業中の事故防止対策等を徹底するため」、全照協含む主な業界団体に対して通達が発出されました。

現在全照協は、厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課様と、我々業界における今後の安全衛生について継続的に意見交換を行う関係にあり、本件につきましては所管の経済産業省だけでなく、厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課の担当者様からも会員企業に対して、本通達の周知依頼を頂きました。

この通達は、労働安全衛生法令上の定めにおいて、「雇用している労働者」に対して様々な安全措置の実施義務がある「法人事業者」だけでなく、現場で一緒に働く「個人事業主であるフリーランス」も含めて、「公演や番組収録などに関わる全てのスタッフが安全対策を行うべきである」という国の考えから発出されました。

特に、「雇用契約でなく法人事業者からの業務委託契約」により事業を行う「個人事業主であるフリーランス」は、「労働者ではなく事業者」である事と、「雇用する労働者に対して安全対策が為されていない場合に、最大懲役刑が課される法人事業者」と違い、「同じ事業者でも雇用する労働者がいない個人事業主であるフリーランス」は、労働安全衛生法令の遵守項目が少なく、結果、墜落災害などの重大災害につながるケースも昨今発生しており、国としても大きく憂慮をしているようです。

ですが我々の業界では、長年にわたり、劇場等演出空間運用基準協議会様、日本舞台技術安全協会様、全国各地の業界団体様、日本照明家協会様、そして全照協の先達者のこれまでご努力で、業界独自の安全対策や安全基準のガイドラインなどを作成し、また、雇用されている労働者だけでなく、業務委託先である多くのフリーランスの方々に対しても、特別教育や安全セミナーなどの受講などを促し、全照協会員事業者様が安全衛生に努めていることは、関係省庁にも伝えてありご認識頂いております。

法人事業者にとってこの通達は、「既に法的に履行義務がある項目であり、現時点で実施していなければそもそもコンプライアンス違反」です。フルハーネス型墜落制止用器具特別教育などの全照協主催の特別教育にもご参加頂いてますので、全照協会員企業様におかれましては問題なく実施されている事かと思います。

が、今一度、以下の抜粋文書及び、リンク先の通達と、これまで業界団体が作成したガイドラインや安全マニュアルをご確認頂き、自社雇用の労働者のみならず、業務委託先であるフリーランスも含めた安全衛生への更なる意識向上、安全対策の見直しにお努め頂けますと幸いです。

(以下抜粋)
フリーランスを含めた芸能従事者の就業中の事故防止対策等を徹底するために

1計画段階における安全性の検討
・制作の作業の計画段階においてあらかじめ作業の方法についての安全性を検討すること。
・併せて、安全衛生対策の実施に必要な予算の確保についても配慮すること。

2 現場における災害防止措置
芸能従事者は以下の取り組みを行うこと
(1)資材による危険の防止
機材等の資材についての安全性を点検するとともに、関係事業者等が現場へ持ち込んだ資材についても、点検結果を報告させる等現場における資材による危険を防止すること。

(2)演技、撮影、照明等の作業における危険の防止
演技、撮影、照明等の作業の方法については、防護設備又は保護具の必要性、訓練又は練習の必要性を検討し、安全な方法により作業を実施すること。

3 安全衛生に関する対策の確立等
制作管理者は以下の取組を行うこと。
(1)安全衛生に関する責任体制の確立
現場における安全衛生責任者を選任する等業務の遂行体制に応じた安全衛生に関する責任体制を確立すること。

(2)安全衛生基準の策定等
安全衛生に関する責任体制、資材の管理、作業の方法等について現場における具体的安全衛生基準を策定し、関係者に周知すること。

(3)専門家による安全性の検討
特撮用機材、擬闘等安全性を検討するうえで専門的知識を必要とする作業については、専門家に検討を依頼する等、その実効を期すこと。

(4)安全衛生教育の実施
制作の作業の関係従事者に対し、作業前打合せ等の機会に、資材、作業方法等に係る危険性、災害防止措置等について安全衛生教育を行うこと。

(5)作業環境・相談体制の整備等
現場において、芸能従事者がストレスなく作業ができるよう、トイレや更衣室も含めた環境整備、トラブルやハラスメントについて相談出来る体制の整備に配慮すること。
心の健康に関する相談対応を行っていることを周知するとともに、芸能従事者が自らのス
トレスの状況についての把握を心がけるよう勧奨すること。

■【通達】フリーランスを含めた芸能従事者の就業中の事故防止対策等の徹底について(PDF)
https://www.zenshokyo.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/04/1611ea7cbf7382c9929e901bad3a33e2.pdf

■フリーランスを含めた芸能従事者の就業中の事故防止対策等の徹底について(厚生労働省HP)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000102664_00006.html

■業界団体が過去作成したガイドラインや管理マニュアル、基準規定集など

●全照協作成 安全衛生管理マニュアル
Part1 事業者管理者編(PDF)
https://www.zenshokyo.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/04/cf331a8e92721bfd970cbfe3514e298a.pdf

Part2 現場管理者・作業者編(PDF)
https://www.zenshokyo.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/04/51a4af1f6d3257d62859ad8b061a6fb6.pdf

Part3 安全衛生マネジメント編(PDF)
https://www.zenshokyo.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/04/Part3_rotated.pdf

全照協HP
https://www.zenshokyo.or.jp/%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E5%86%85%E5%AE%B9/%E6%95%99%E8%82%B2%E6%83%85%E5%A0%B1%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A-2-2/#anzenkanri

●劇場等演出空間運用基準協議会(基準協) 作成 
劇場等演出空間の運用 および安全に関する ガイドライン(PDF)
http://www.kijunkyo.jp/img/archives/guideline2017_2020.pdf

劇場等演出空間運用基準協議会(基準協) HP ガイドラインアーカイブ
http://www.kijunkyo.jp/archives.html

●日本舞台技術安全協会(JASST) 安全の手引き HPトップ内左欄「安全の手引き」ボタンクリック先
http://www.jasst.org/Jap/index_J.html 

●日本照明家協会HP 出版物
https://www.jaled.or.jp/html/library/publication.php

本通達は今まで様々な法改正に対応してきた法人事業者にとっては、凡そ問題の無い内容とかと思います。しかしこうした通達の発出先団体に指定される事で、現場実態上遵守に無理が生じる労働安全衛生法令の条文について、業界に則した法令解釈の検討を厚生労働省と続けていくことが可能となります。

そして少々希望的な展望ですが、業務が戻ってきたときに必ず再燃する「働き方改革問題」への対応を視野に入れる必要があります。今は努力義務ですが、インターバル制度が義務化されるとこれまで以上に大きな影響が生じます。

事業者の経営課題には厚生労働問題が常に存在します。
引き続き全照協は、厚生労働省や所管の経済産業省と連携をして、諸課題の解決に努めて参ります。何卒宜しくお願い申し上げます。