業務委託先のフリーランス等との受発注時の契約書に付きまして、我々業界では、口頭契約やメール等での電磁的処理に留まることが多く、またこの事は、民法上問題がないことから長年の業界慣習となっておりました。
しかしながら、コロナ禍において政府自治体補助金等の申請時に、業務遂行履歴や減収証明等に契約書を求められる事があり、受給が困難になるケースが発生したことから、下請法3条(文書作成義務)に基づいた契約書を交わす慣行を根付かせる必要があると国が判断をし、昨年の内閣府におけるフリーランスガイドライン作成を経て、今年からいよいよ文化芸術分野に関わる実演家・スタッフおいての検討が、文化庁において行われる事となりました。
先日、9月10日に萩生田大臣が閣議後会見において会議開催を発表し、同日、文化庁からプレスリリースを出し、文化庁長官と記者懇談会で発言を行い、9月17日に第1回目の検討会議が開催されます。
「全照協及びスタッフ事業者団体の連合組織である(一社)日本舞台技術スタッフ団体連合会(スタッフ連合会)の会員企業」と、「業務委託先のフリーランス等」は契約当事者ですので、下請法3条(文書作成義務)が適用となると、これは罰則付きの条文のため法令遵守(コンプライアンス)の観点から対応する必要も出てきます。
従来の検討会議ですと、学者・弁護士等の知識人のみで構成されることが一般的でしたが、全照協及びスタッフ連合会では、以前より文化庁及びご関係の議員に対して、実際に契約書を作成する側からの意見も反映して頂けるようロビイング活動をしてまいりまして、結果、今回の検討会議に全照協の寺田航常務理事が委員として参加する事が決まりました。
こうした省庁の会議に技術スタッフ側から委員が出る事は前例が無いのですが、同じ文化芸術分野でも、実演家と技術スタッフの違いをご理解頂き、スタッフ事業者からの意見が必要とご推挙くださった、萩生田文部科学大臣、公明党浮島とも子元文部科学副大臣と、文化庁の皆様に深く感謝申し上げます。
業務委託先であるフリーランスとは雇用契約では有りませんので、労災保険の対象ではなく事故時の補償が無いことから、一部の現場においてクライアント様から現場従事を断られるケースも発生しておりましたが、今年の4月より文化芸術やライブエンタテインメントに関わるフリーランス(個人事業主)スタッフが個人で加入できる政府労災保険が変更され、特別加入できるようになりました。
全国芸能従事者労災保険センターHP
https://geinourousai.org/index.php
また、2023年から開始される「インボイス制度」では、「免税事業者の法人・フリーランス」との取引の際は、消費税の仕入控除が無くなる事から、法人事業者は納税時に仕入控除分の現金負担が追加発生するため、コロナ禍で大打撃を受けた法人事業者は「課税事業者の法人・フリーランス」との取引にシフトするか、控除分負担し「免税事業者の法人・フリーランス」との取引を続けるか、難しい判断を検討していく必要があります。
インボイス制度 国税庁HP
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_a
この事も契約書では必ず踏まえる必要があります。
一方的な負担をどちらかに強いる内容ではなく、受発注双方にメリットがある内容である必要があります。
会議では、法人事業者にとっての法令遵守・必要性・有益性に即して意見具申していきます。
以下参考ページリンクいたしました。何卒宜しくお願い申し上げます。
○文化庁「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けた検討会議」プレスリリース・
委員名簿(PDF)
https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/93379201_01.pdf
〇文化庁HPプレスリリース(9/10付けで、9/17に検討会議を開催することを発表)
https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/93379201.html
○フリーランス、適正な契約書締結を(読売新聞オンライン) – Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/2f4f4837b3c1da4e365a8d80524369e1ee92de9b
○内閣府 フリーランスガイドライン概要
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2021/mar/210326free04.pdf
○内閣府 フリーランスガイドライン
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2021/mar/210326free03.pdf